着物の柄と着る季節について

着物には草花や蝶や動物などいろいろなモチーフが描かれています。その季節に咲く花や動物たち、海や山、雲、などなど。そんな自然のものを元に描かれたモチーフの多い着物では、季節感がとても大切です。

着物のおしゃれを楽しむなら、そういった豆知識も備えておきたいものですよね。

着物っていつ何を着たらいいかわからない、今持っている着物はいつ着るのがいいの?そんな疑問や不安を持っている方もいらっしゃるかもしれません。

おおまかなルールはありますが、基本的には季節感を意識すれば大丈夫。そんなに難しく考えなくてもいいんですよ。

今回は、難しいことは抜きにして、春、夏、秋、冬、それぞれの季節におすすめな柄をいくつか紹介していきたいと思います。

 

春におすすめの柄

梅の花が咲き始めると、いよいよ春が近づいてきたなぁ、という気分になりますね。

梅の花は昔から着物の柄にもよく使われています。松竹梅と言われるように、おめでたい柄のひとつともされているんですよ。

そうそう、ここでポイントをひとつ、「着物のおしゃれは季節の先取り」なんです。

まだほんとうの春の気候にはちょっと早いけれど、年が明けたら、梅の花があしらわれた着物を着始めていいころかなと思います。新年の寿ぎと春の訪れへの思いをこめて。

 

ぼたん

ぼたんの花は華やかで美しくて、とっても優美。百花の王なんていうよばれ方をすることもあるんですよ。

特に、女性の着物の柄に使われることが多いですね。本物のぼたんの花は、4月~5月ころに咲くものが多いようです。

お花の柄は、その花が咲く時期に着るのがよいので、ぼたんも春におすすめの柄のひとつです。

立てば芍薬(しゃくやく)、座ればぼたん、歩く姿はゆりの花

女性の美しさや優雅さを表す言葉です。ここにでてくるぼたんと芍薬は、優雅さや花の雰囲気も似ていますが、そのちがいをご存じですか?

実は、ぼたんは木本(木)で、芍薬は草本(草)に分類されるんだそうです。葉っぱの形もちがうんですよ。あら、この柄はどっちかな?と迷ったら、チェックしてみてくださいね。

※芍薬はこちら↓

夏におすすめの柄

朝顔

朝顔というと、夏だ~という感じがしますね。そういえば、子どものころ、夏休みにまいにち観察日記を書いていた気がしますが、みなさんはいかがでしょう?

そんな、まさに夏というイメージの朝顔の柄は、やっぱり夏に着るのがいいですね。真夏の暑い時期には、絽や紗といった薄くて透け感のある着物を着ます。透け感があるので、夏の植物も涼しげな印象になります。

着物はちょっと難しいかなという方には、浴衣がおすすめ。朝顔柄の浴衣を着て、縁日や花火を見にでかけるなんて、すてきだと思いませんか?

 

雪輪

雪って冬に降るのものなのに、どうして夏におすすめの柄なの?って思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

「雪輪」という柄は、雪そのものというより、雪をデザイン化したものになります。

昔の人は、寒い季節には赤系の色のかんざしをさして暖かい雰囲気に、暑い季節には青や緑系のかんざしで涼しげに見せていたそうです。エアコンも扇風機もない時代からの知恵と工夫はすばらしいですね。

雪輪の柄も、そんなふう。目に映る姿も涼やかにということで、夏におすすめの柄とされているんです。粋ですよね。

 

秋におすすめの柄

もみじ、いちょう

秋といえば…、読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋、みなさんはどんな秋でしょうか?

紅葉狩りにお月見、なんていうのも風情があっていいですよね。山に紅葉狩りに行くのもいいし、鮮やかな黄色になった街路樹の下を歩くのもいいですよね。

もみじもいちょうは春や夏にも緑の葉をつけていますが、やっぱり赤や黄色に色づいたころが存在感もあって、なにより美しいです。

着物でも、紅葉したもみじやいちょうの葉が描かれたものがあります。夏から秋、秋から冬へとだんだんと季節が進むにつれて、花も少なくなってくる季節。美しい紅葉柄はあたたかみがあって、それでいてどこかにちょっと憂いがあって。季節にぴったりでおすすめですよ。

 

冬におすすめの柄

雪輪は夏におすすめの柄ですよ、というお話をしましたが、雪のモチーフなのでもちろん冬にもOKです。ただし、雪景色や雪をかぶった花や木が描かれた柄は、夏ではなく冬に着るのがおすすめ。最近では、もみの木やサンタクロースなど、クリスマス柄をあしらった着物や帯も見かけるようになりました。こういったものは、雪と一緒に描かれていても、冬の間ずーっとではなく、クリスマスシーズンまでがよいですね。

季節の先取りはOKなのですが、シーズン遅れになってしまうとおしゃれ感が損なわれてしまいますから。このあたりは洋服と同じですね。

 

松は常緑樹。冬になっても緑の葉を絶やすことがないので、縁起がよいものとされています。お正月の門松なんかにも使われていますね。

松は特に冬限定の柄というわけではないのですけれど、おめでたい柄なので、お正月のある冬におすすめの柄のひとつです。

ほとんどの松は冬でも緑の葉をつけていますが、カラマツという松は紅葉するんです。黄色というか、黄金色というか、オレンジ色というか、、、何色と表現するのはちょっと難しいんですが、夕日に照らされたところはそれはそれは美しいものですよ。

おっと、話がちょっぴりそれましたが、機会があったらぜひ見てみてくださいね。

 

南天

南天は赤い小さな実がかわいらしいですよね。「なんてん」という響きが「難を転じる」につながるということで、縁起のよいものとされています。

南天の花は6月~7月ころに咲くそうなんですが、着物の柄によく使われるのは実の方なんです。赤い実が見ごろになるのは、11月~2月ころの寒い時期。縁起のよさと明るい色合いが、冬やお正月シーズンにおすすめです。

 

四季を通して着られるもの

さて、いろいろと紹介してきましたが、もし、着物や帯に1種類の柄だけが描かれていたら、その柄の象徴する季節に着るのがおすすめです。

特に、写真のように鮮明に描かれている柄は着る時期を意識してみてくださいね。

でも、1つの種類だけでなく、いろいろな柄が描かれた着物も多いですよね。そういうものはいつ着るのが良いと思いますか?

実は、2つ以上の季節の柄が描かれた着物は、季節を問わずいつでも着て大丈夫なんです。

例えばこんなふうに、桜、ぼたん、菊、かえでなど、いろいろな季節のモチーフが描かれている着物や帯ですね。

基本的には、オールシーズンOKですが、もし何かメインのモチーフがあったら、そのモチーフの季節に着るとよりおしゃれかなと思います。

一年中いつでも着られるものを通年(つうねん)といいます。この着物は通年着られるよ、とか、これは通年柄だね、とか、そんなふうに使います。

季節の柄でも通年柄と一緒に描かれているものは、オールシーズンOKです。

 

それから、洋花も季節を問わず着られます。

着物の歴史は何百年もあって、自然のうつろいをもとにたくさんの柄が描かれてきました。

簡単にいうと、西洋から入ってきた花、着物の長い歴史からみると最近日本に入ってきた花を洋花と言います。例えば、バラとか、チューリップとかですね。

洋花だと、バラのモチーフが描かれた着物や帯はよく目にします。振袖なんかはバラがメインモチーフになっているものも結構ありますね。華やかできれいです。若い子向けの着物に多い印象ですが、もちろん年齢問わず着られますよ。着物は着てみたいけど、クラシック過ぎる柄は苦手かも、という方にもおすすめです。

 

他にも、幾何学的な模様とか、自然のものがもとになってできているけど文様になっている柄とか、幻の花とか、いろいろあります。ほんとうにたくさんあるので、それはまたちがう機会に紹介していけたらなと思います。

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